
--「手術撮影は俯瞰撮影だから難しい」-- 2004年の春、i社の手術ロボットのデモ会場で、開発エンジニアの一人が漏らしたその一言がMDクレーン開発のきっかけでした。当時出始めた最新型の小型HDVカメラなら、手術室という狭い空間の中でも俯瞰撮影が可能ではないか。小さなHDカメラを載せるための移動式架台(クレーン)を作ってみようと思ったのです。
エアロスケイプ株式会社 代表取締役 安藤 淳
MDクレーン
開発から製品化まで
宙に浮かぶカメラ
予想はしていましたが、当初より問題が山積みでした。手術映像におけるカメラ位置は執刀医の目線に近いことが望ましいのですが、無影灯と術野の間に残されたスペースは多くはありません。小型で高性能なHDカメラを無影灯の光や執刀の邪魔にならない空中の一点に固定しなければなりません。
しかも、その一点は度々変化するため、カメラ位置もすぐに変えられなければなりません。カメラのパンチルト、ズーム、フォーカス、アイリスなどをリモートコントローラーで制御するために3D雲台を採用しました。最も悩んだのはどのようにドクター達の頭上を越えて、無影灯の下にカメラを潜り込ませるかでした。
揺れとの戦い
試作機を3台作り最終的にアーチ型クレーンシステムを新設計しました。執刀医のドクター方の背後から頭上を丸く飛び越えるような形です。とてもユニークな構造でしたので、国際特許IPCと日本の特許も取得出来ました。試作段階での難問はカメラの「揺れ」でした。長いアームの先端に取り付けられたカメラはほんの少し触れただけで6〜7秒もの間揺れ動き、揺れが止まるまでは撮影が始められません。

この「揺れ」を最小限に抑えるためにアーチ支柱とそれを支えるボディの構造を研究し、最終的には2秒程で揺れが収まるようにしました。
使いやすさと安全性
MDクレーンの大きさは支柱、雲台、カメラの重量を支えるためにある程度の重量が必要でした。架台には5つの車輪を取付けて、一人でも移動出来るようにしてあります。3D雲台を動かすためのリモートコントローラーは最もシンプルかつ使いやすいアナログジョイスティックを採用しました。
安全面では操作中に支柱が急に下がらないようなロック機能、カメラが落ちたりしないようなセーフティ機能の他、MDクレーン自体の傾斜転倒角度のテストや抗菌塗装に至るまで十分安全性を考慮して設計しました。
3D雲台の必要性
何故3D雲台が必要なのか、それは空中に浮かんだカメラの位置を移動しても、術野映像の正中線を常に揃えられるためです。勿論2D雲台でもMDクレーン本体の位置を変えれば出来ないことはありませんが、実際の手術中では不可能です。3D雲台のパンティルトはコントローラーで微速から高速まで可変式になっており、術野の中心を速やかに捕らえます。試作機で何百回もテストを行い、最適な速度と使いやすさを追求しました。

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